代表インタビュー

高齢者にいい環境を提供するためには
職員への環境も整えなければいけない

世の中にある多くの仕事の中でこの仕事を選んだ理由は何ですか?

中学3年生くらいですかね、祖父が認知症になり、祖母が一生懸命介護をしていたのですが、徘徊がひどくて大変だったんです。
祖父はお酒が好きで酒屋でよく買っていたんですが、認知症が進むと本人は買ったつもりでも、お金を払わずそのまま店から出てきてしまい、店から苦情が来たり警察から連絡がきたりして。昔は認知症という言葉も浸透しておらず「ちょっとおかしくなった」という感じで、外に出せないから家中全部鍵を付けて施錠して…。
そうすると祖父は靴を持ちながら、どこから外に出られるかと家の中を延々と歩き回るようになる…。祖母は畑仕事をしながら、合間合間に祖父を看る毎日で…。そんな祖母の姿を見て「おばあちゃん大変だな、何か自分もできるかな?手伝わないとな」と思って徐々に手伝うようになったんです。
そういう経験が今の仕事につながっていると思います。

介護をする人の大変さを少年時代から感じていたんですね。
今、「徘徊」の話がありましたが、他にはどんなシーンを思い出しますか?

うちの祖父は一度お風呂に入るとなかなか上がらないんですよ。1時間ぐらい平気で入っていて、バスタブから上げるのにすごく苦労していたんです。無理に上げようとすれば、「痛い」と言って騒いで暴れるので、その頃は私が一緒に入っていたんです。私が一緒に入って「そろそろ上がろうよ」と声を掛けると、普通に上がるようになって…。

なぜ高橋さんが?自ら一緒にお風呂に入るようになったんですか?

私は3人兄弟の真ん中なんですけど、祖父は私と一番相性が良かったので、「じゃあ自分がやろう」ということで…。その方が平和に進みますし。
みんなで色々試したんですけどね。祖父がたまに一人で勝手にお風呂に入るので、「おじいちゃんがまたいない!」「1人で風呂に入っている」となったら、「純行け」みたいな(笑)。すでに僕自身はお風呂に入った後でも、また入ったり。朝からお風呂に入って、一緒に上がったりしてましたね(笑)。

高橋さんの空気を読む力と優しさはすごいですね。当時まだ中学生なのに。
勉強もしなくてはいけない年頃です。部活はしていたんですか?

はい、野球部でした。なので体力はある方だと思います。

この仕事の一番の魅力は何でしょう?

いろんな人と触れ合い、知ることができることです。お年寄り、認知症といっても、いろんな方がいらっしゃいます。「接し方」「伝え方」など、とても勉強になることが多い。そのせいか、私は人と話をする時にすごく観察してしまうクセがあるんです。アプローチの仕方も「こうしたら、どう反応するかな?」とか。それで「ああ、こうなんだ」と発見があるとすごく楽しい。発見して終わるのではなくて、それを生かすことで私たちも介護がしやすくなり、本人も安心するんです。それが一番面白いですね。

本当に人が好きなんですね。同じように対応していても、「捉え方」、「伝わり方」って百人百通りですからね。
どうやってそのスキルを習得したんですか?

たくさんの人に会う中で「見方」が変わって、発想の転換ができました。前はそのままに捉え過ぎていたので、真正面にぶつかってしまって「何でこうなるの?!」って…。
でも、そこで悩む介護士って多いと思うんです。

例えば「徘徊」は、認知症の方が「外に出たい」と言うのに対して頭から「出てはダメ」と止めるだけなんですが、そうではなく、「そうですか。でも今は出られないんですよ。なぜ外に出たいんですか?」とかいろいろ話しているうちに、「俺は今から○○に行って、○○をしなくてはいけないんだ。だから出る」と、その人が昔やっていた仕事の話になるわけです。その気持ちは消化してあげなければなりません。このまま制止してもいい結果にならないので、一緒に外に出て話をする。話をしていると、忘れてしまって戻ってくるんですよ。「なんだ。こうすればいいのか」と分かるんです。受容しようともせずただ止めるから本人も興奮するし、こっちも興奮して大変になっちゃうんです。対処方法さえ分かればそんなにならないんです。

うちの祖父も一回ショートステイに行った時に、施設の職員から邪険にされていたんですよね。昔だったので、祖父が徘徊するので部屋に閉じ込められていたんです。鍵を閉められて。とても悲しかった。やっぱり傾聴しないといけないし、受容しないといけないなと思います。とにかく私は困っている人たちに寄り添いたい。助けたい。だから多少大変でも人が面倒に思うことも率先してやるんです。

どんなに大変でも、壁にぶつかってもこの仕事を辞ず頑張れたのはなぜですか?

自分でやるって決めて信念を持って始めたことなので、途中で投げ出したくないというか…プライドですかね。やっぱりやり通さないと。

信念というのは「困っている人を助けたい」ということですか?

はい。30歳くらいで早めに管理職になって、スタッフのマネージメントをしていた時に、「高齢者にいい環境を提供するためには、同時に職員への環境も整えなければいけない」と思ったんです。でもそれを実現するためには自分自身がもっとステップアップしていく必要があります。途中で挫折するわけにはいかない。

今、経営者として施設をやっているのは、自分の理想の完成形がどこま実現できるかという一つの挑戦なんです。

小さい時から全くブレていないですね。筋金入りですね。
早い段階で「これが介護の現場の問題だ」と認識し、「だったら何とかしなくてはいけない」と自分の使命として捉え、「そのためにはもっと自分が成長してステージを上げていく必要がある」と考える…

次のステージに行きたいなら、そうするべきだと思います。私が職員を指導する時にも「目標を立てて目標まで行ったら、また次の目標ができるから、そこで終わらない。そこで終わる人はそれまでなので、私にもその人をそれ以上伸ばせない。次のステージに行きたいなら、自分で目標を次々に発見できる人でないと難しい」という話はします。

そういう人材育成方法も体系化し、次のリーダーを育てないといけないですよね。

そうですね。今はそこがすごく難しいと思っています。

今の事業所は引き継いだとおっしゃっていましたが、先代や、尊敬する人物の言葉でもいいですが、心に刻まれている言葉はありますか?

私が管理職になった当時、他の従業員はほとんど年上だったんです。後から入ったのに、2、3年で管理職になってしまったので、影では「何であの人なんだ?若いのにできるのか?」って言われていたようなんです。そんな時に前任者が送別会で最後に言っていただいたのが「役職は人を育てます。まだ純さんは完璧にできる管理者ではないかもしれない、でも純さんはなろうと努力をする。周りの人もそれを支援しないと、人は育たちません。純さんも努力するけど、みんなも純さんが管理者になれるように応援してください」と話してくれたんです。それまでは「今後私はどう采配していけばいいのか」と悩んでいたんですけど…。ふっと楽になって「自分はやるべきことを追求しながら、その中でみんなの評価をどう得られるか努力をするだけなんだな」とシンプルに考えられるようになったので、それはずっと思っています。

最初から完璧にできる人はいません。私の仕事はその人をどう手助けできるかどうかだと思うので。しっかり育てることをやっていきたいと思っています。

チームワークと信頼関係ですね。

はい。スタッフ間で「不満」が出た時はちゃんと話して見るように言います。文句ではなく、会議を開いたり。私は何か問題が発生した時には職員に「じゃあ、みんなで話してみたら」と必ずコミュニケーションを取るように促しているんです。やっぱり1人がワンマンなプレーとして捉えられても困るし、いいことだったら、みんなで共有するべきだと思うので。
上の立場の人には「○○さんがこういう話をしていて、すごくいい話だと思うから話してみて」というように。下で働いている職員には「遠慮せず上にあげてみて」と伝え、上の人にはそれを吸い上げるように促します。

誰かが意識して積極的に促さないと、止まってしまいますからね。

そうですね。それが不満になって結局、そこから負の連鎖になってしまうので。多分職員は私に100の答えを求めているところがあるんですけど、逆に私は答えを出さないです。私がやってしまえば結局「社長ありき」の会社になってしまうので。私はよく職員に「みなさんの力を信じます」と伝えています。それを「社長はそうやっていつも逃げている」と捉える人もいるし、「社長が信頼してくれているから、それに応えよう」と捉える人もいる。

こういう私のやり方や考え方に共感できない人には、すごく苦痛だと思います。指示待ち人間は「何で社長は言ってくれないの?」「何で社長はやってくれないの?」と思うでしょうけど、逆に自分の信念を持って入ってきた人は「いろいろ挑戦できそうだな」と、人生を通して充実しますし、日々楽しく仕事ができると思いますよ。

とても今の時代に合っていると思います。
戦後は強いリーダーがいて、無理やり引っ張っていくぐらいがよかったのかもしれないけど。今はみんなでやる。
社長は目指す方向、ビジョンだけは明確に示して、そこさえブレなければ、あとはみんなで作り上げていく。
みんなで成長していこうという感じですね。
今の話につながってきますが、従業員さんとの間で大切にしていることは何ですか?

高橋 「日常の五心」です。
ハイという素直な心、
すみませんという反省の心、
おかげさまという謙虚な心、
私がしますという奉仕の心、
ありがとうという感謝の心、
すごく当たり前で原点だと思います。

私自身が「日常の五心」を忘れることなく日頃から心がけています。言葉遣いも丁寧に。「やって」ではなくて、「ごめんね、ありがとうね」「よろしくね」というふうに。職員間の言葉使いが乱れてくると、ドンドン利用者さんにも出てしまい、ドンドン悪い風習になるので。まずは自分から。戒めの意味も込めて。

今の事業所は経営してから1年経ちますか?

1年半ちょっとです。

今までが様子を見る1年だったとすると、これからは仕組みを作っていく段階ということでしょうか。

そうですね。これからもっと私の価値観、想いを伝えて、目指す未来を語って、経営に落とし込んで行きたいと思っています。

さて死んでも絶対に変えたくない、天変地異が起きても変えたくないポリシーを教えて下さい。

「職員が生き生きしている」ということ。そうじゃないといい介護ができません。関わる人をみんな大事にしながら、その上でお客様も大事にする、というポリシーはこれからも変えたくないし、そこを基本としていきたいと思っています。

どんなに会社が厳しい状態でも、ここだけは死守するということですね。

これがなくて利益を出しても、いつか崩れますので。

今はまだバリバリ現役世代ですが、介護の仕事はこれからもずっと社会的に必要とされる仕事です。次の世代に未来に向けて、どんなことを伝えていきたいですか。

今は専門学校もかなり縮小してきて、担い手が少ないんです。24年くらい前は結構「介護」業界が盛り上がっている時期で専門学校も増えてすごかったんですが、今は縮小の一途。
介護は社会的地位が低いと思われている。実際収入ベースもなぜか低い。でも本当は「そういう仕事ではないし、他のプロフェッショナルと同じプロの仕事。社会から必要とされている。」「だから、個々が毎日イキイキと仕事をして、周りが羨ましく思うような存在になって、自分たちで社会的地位を上げていこう!」ということは伝えていきたいです。

今栗原から1時間半くらいかけて名取まで車で通っているんですが、栗原にも拠点を置いて色々展開できないかと考えています。

栗原の広い土地で農業もやりながら、まごころワールドを築くとか?

そうですね。全世代が安心して暮らせる仕組みを作りたいですね。そういったプロジェクトも私だけで考えるのではなく、企画から職員と一体となってみんなで取り組んでいければいいですね。

職員さんも優先的に将来はそこに住めるとか。ワクワクするようなメリットがあるといいですね。

そういうことは積極的にやっていきたいです。職員の家族も。この前も職員で家族を他のデイサービスに頼んでいる人が「ちゃんとケアされてないけど、うちの親は大変だからこっちに頼むのは悪いし…」と言うので、「全然大丈夫だよ。職員の勉強にもなるからこっちに連れてきてよ」と言ったんです。

すごく頼もしいじゃないですか!「家族優遇制」みたいな感じで。

子連れ出勤でもぜんぜん構わないと私は思っているんです。そういった新しい働き方改革もどんどん推し進めていきたいですね。

メチャメチャ大事だと思いますね。
美容師さんとかも働き手不足ですけど、託児所や保育所を併設してやっている会社もあります。

シルバー世代も、これからはバリバリ働く時代です。そうなると孫の面倒をみながら働ける場所を探している人もいるかもしれません。
今度立ち上げる「障害者のグループホーム」は食事の提供がメインの仕事なので、夕方にお子さんやお孫さん同伴で、食事の準備の仕事をして帰るというスタイルでも全然構わないと思っています。働き方も多様化していますので、そういうことに細やかに対応していかないといけないと感じています。

価値観という意味でお伺いします。嫌いな人、許せない言動があれば教えてください。

自己犠牲できない人。自己中心的な人。自分の利益ばかりを追求して動く人はだめですね。結局周りを巻き込んで悪い雰囲気を作ってしまう。これでは明るく健全な未来は一緒に創っていけません。
これからは私の想いや価値観を発信していき、それに共感してくれる仲間を老若男女問わず集めて、みんなで同じ方向を見て明るく楽しい未来を築いていきたいです!
そして働く人はもちろん、お年寄りも障害を持つ方も安心して幸せに暮らせる「まごころワールド」を実現したいですね。

プロフィール

高橋 純(たかはし じゅん)

出 身 地 宮城県栗原市
生年月日 1979年4月3日生まれ
趣  味 筋トレ
最終学歴 仙台医療福祉専門学校 介護福祉科
職  歴 社会福祉法人 豊明会
特別養護老人ホーム 若藤園
社会福祉法人 宮城厚生福祉会
デイサービスセンターくりこまの里
シップヘルスケアファーマシー東日本株式会社 グリーンライフ仙台
株式会社シルバーサポートまごころ
実績や資格 介護福祉士 介護支援専門員
くりこまの里では居宅支援事業所の立ち上げ。
デイサービスの稼働率UP、利用定員を25名から35名まで増員。
グリーンライフ仙台では介護付の立ち上げ、入居促進。300室ある居室の入居率を90%まであげてきた。
現在進行形の
プロジェクト
障がい事業:共同生活援助施設
ショートステイの立ち上げ準備
デイサービスの稼働率UP、利用定員を25名から35名まで増員。
職員の環境整備:ICT機器の導入、勤怠管理システムの導入など。

インタビュー

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